昨日、L.L.Beanの販売員、○野さんが私のドイツ行きにあたり、送別会を企画してくださった。
本当に心のこもったお見送りをしていただき、感謝の気持ちしか湧いてこなかった。
○野さんとの出会いは忘れもしない2017年12月31日の昼頃のことである。
私には3つ年上の兄がいるのだが、その兄がしつこく何度も会わしたい人がいると言うのだ。あまりにしつこく言うので、家族が集まる貴重な年の瀬であるにも関わらず、また妻からの冷たい視線を振り切り、その方に会いにいったわけである。
そう。この人こそ◯野さんである。◯野さんは2017年度のビーンズ・ベストを授賞されているトップセールスマンである。
初めてお会いしときの磯野さんの印象は、異常なほどに服や靴、鞄などについての知識が豊かな人。店内に販売されている商品のファブリックやその特徴、その製造過程から歴史など、ありとあらゆることを教えてくれるのである。Googleから得られるような知識のレベルを遥かに凌駕していた。
はっきり言ってマニア。変態レベルである。結局、話を聞きながらことごとく試着をさせてもらっているうちにあっという間に4時間経ってしまうという始末に。もちろん家族からは大クレームを食らってしまった。でもめちゃくちゃ知的欲求を刺激された。
そして、そんな衝撃的な出会いから私が彼に魅了されてしまうまで時間は多くかからなかった。
私がドイツに行くんだという話をすると、現地の気候や文化について詳しく解説してくれたり、格安航空券の手配、現地にいる知り合いの方を紹介してくださったりと大変親切にしてくださった。知識量は半端ではなく、多ジャンルに及ぶ。もはやこのかたは一体何者なのか、販売員ではなかったのか?という疑問を抱かずにはいられない。一度も商品を買ったことのないただの客にこれだけのことがなぜできるのだろうか。
考えても分からなかった。
ただ、一つ分かることは、営業戦略ではなく、「無償の愛」だということ。(別に変な意味ではない。断言しておく)
そして、知らず知らずのうちに彼のファンになってしまった私は、次第に彼の愛するL.L.Beanのファンにもなっていった。今後必要となる衣類の多くをここで調達するに至った。
こうして◯野さんと接しているうちに、彼の仕事に対する確固たる哲学の存在を意識せざる負えなくなっていくわけだが、昨日の送別会で彼の生い立ちや生き方について話を聞くことで、それが分かった。
彼の哲学はこうである。
仕事は遊びの延長線上にある。
私には衝撃でしかなかった。誰が見ても圧倒的な結果を出している販売員がいう言葉か??私は、最初そう叫びそうになったが話を聞いているうちに、少しずつ腑に落ちてきた。自分の仕事を「仕事」として捉えて取り組むと、どんな意識が生まれるのか。私の場合「義務」だとか「責任」がピッタリとくる。確かにこれらは仕事をする上で必要だとは思う。
しかし、こうした意識で仕事をしている限りは◯野さんが私にしてくれたような、人の心を動かしたり、感動させりということはおそらくできないだろう。ただ、適度な満足度を生んだり、同僚から一定レベルの評価を得ることは難しくないとは思う。
これに対して「遊びの延長」という意識で仕事をしてみるとどうだろうか。「遊び」は「したい、もっとしたい」という欲求から生まれてくる。またそこには必然的に「好きだ!」という感情も含まれている。
こうしたマインドで仕事をしていると、疲れをまず感じないだろうし、ストレスも感じない。そして、パフォーマンスも天井知らずだろう。好きなことをしているときは妥協もしないし、自分が納得いくまでやり切らないと気が済まない。お金をもらえるかどうかなどということも考えないだろう。コスパも考えないかもしれない。
「遊びの延長」と「義務・責任」
どちらのスタンスで仕事に取り組んだときに高いパフォーマンスを生むだろうか。答えは明白だ。
遊びの延長線上で仕事をしている人は最強である。
私は磯野さんに最後に質問してみた。
「仕事のある朝、憂鬱になることはありますか?」
質問してすぐに愚問だと気付いた。
「ないよ。毎日楽しいよね。うん。すごく幸せだよ〜。」