本記事は、筆者がVリーグ所属チームのヘッドコーチに就任した際に直面したデータ分析と活用への新たな挑戦と、その過程で確立していったコーチングおよびシステム・戦術構築に関する哲学と実践の報告である。コーチングの向上、そしてシステムと戦術への理解に資することを目指している。
データアレルギーからの克服
データ分析に対するアレルギー
そもそも、育成カテゴリーでのコーチング経験しかなかった筆者には、分析ソフトを使ってデータ解析し、それをゲームに活用するという経験は皆無であった。強いて言うなら、高校の部活動でコーチングをしている際にマネージャーがとった手書きの記録を見て、自チームプレーヤーのアタック効果率をチェックするといった程度の経験しかなかったのである。
ただ一方で、バレーボール専用の分析ソフトが存在することは知っており、分析結果をリアルタイム活用した全日本女子が躍進し、オリンピックで銅メダルを獲得したというエピソードにも非常に興味を持っていた。
しかし、当時の筆者にはデータ分析ソフトを活用してコーチングを実践する、戦術を組み立てて戦うといった経験はなかった。そうした経験のなさゆえに、漠然としたデータ分析ソフトを活用するということに対してアレルギー的な感覚は持っていたかもしれない。
