プレッシャーをかけ合わない社会

アイディア

善意ある人たちの助けのおかげでひとまず住居が決まり、ベルリン生活を安心してスタートすることができました。(あの一通のツイッターのメッセージからすべてが始まった。お花見参加していた奥さんが所有する物件に格安で入居させていただきました。)

しかし、やはりまだまだ慣れない生活で自分ではどうすることもできないことが多々あります。家のお湯が出ないということで家主さんに連絡したところ、早急に対応してくださいました。(ご迷惑おかけしております。)

そして、その日の午後には業者さんが来てくれるということでしたが、まさかのドタキャン。

「おう〜そんなことがあるか。日本社会にはないぞ。こんなことは。」

と思いながら、翌日の夕方に来てくれることになり一安心。

そして、翌日の夕方。

今後は時間通りに到着。まずはほっと一安心。

特に悪びれた様子もなく業者さんは素敵な笑顔で家主さんとフランクなやりとりをしながら手際よく修理していきます。

そんなやりとりを見ながら、

「家主さんって本当にいい人だな〜。なんて寛容だ。僕はなんて心が狭いんだろう。僕だったら文句の一つや二つ言ってしまいそうだ。」

そう思いながら家主さんのスマートで流暢なドイツ語に見とれていました。

そしてやりとりを終えた後、気持ちよくとびきりの笑顔でチップを出される家主さん。

「かっこよすぎる。」

チップ文化があるのは知っているけれどドタキャンして次の日の夕方に来ているのに。

と思いながら、もはやここは日本でないのになぜか「日本の普通」をスタンダードにして考えてしまう私。

時間がなくっては常套文句!?

家主さんがおっしゃるには、ドイツでは1日5回以上は聞く言い訳があるらしい。

「時間がなくって・・・。」

「えっ?それ日本でいうと、仕事できないレッテル貼られるやつやん!」

と思いながら。

でもね、、、と家主さん。

「大体は5時が終業時間になるんだけど、その30分前には片付けし始めて、そこからアフターファイブの楽しい予定について話をしているよ。それがここでの当たり前。」

さらに続く。

でもね、、、と家主さん。

「人が早く帰るのを咎めたり、帰りにくい雰囲気を作ってしまったら自分も帰れなくなるよ。そうなるとどんどん終業時間は遅くなっていくよね。(これ日本人のこと言ってる?)他人にプレッシャーかけるってことは自分にもプレッシャーをかけることにもなるよね。」

さらにさらに、でもね、、、と家主さん。

「ドイツは生産性は高いよ。」

確かに実際、ドイツの生産性は日本よりもはるかに高い。下記の記事を見て私は結構凹みました。これまでの働き方ってなんだったんだろう。

とある火曜日の夜

こうしてカルチャーショックを受けた後、一人で散策。夜の8時なのにこの時期のドイツは外がまだ明るい。
みんなで外でビール飲見ながら食事している。ほとんど私服の人ばっかり。この人たち働いてるのかな?明日、休みじゃないよね。結構出来上がっているような人もたくさんいましたよ。飲み始めて3時間は経ってるのかな。毎日こんな感じなの?

とある古着屋さんでの一コマ

古着屋。これぞ芸術ディスプレイです。ちょっと見えにくいかもしれませんが、奥の方にあるのは靴です。ぎゅうぎゅうに押し込まれていました。多分一つとったら総崩れです。


店に入ってみるとノリノリな音楽に合わせて鼻歌混じりで体を揺らす店長。

「ハロ!」

思わぬラフな挨拶に私も思わず、

「ハロ!」

初めて会ったんだけどそんな感じがしない。いいね!

しばらく店内をブラブラしていると、試着室からお客さんが店長と会話をし始める。
ドイツ語だからわからないのだけど、多分こんな会話。

「この服あわなかったよ。う〜ん残念。はいっ(試着した服を店長にサッと渡す)。またね。」←客

「ば〜い」←店長

言葉は分からなかったが、このやりとりから日本的な店員と客の関係性は一切ないと感じた。

私には、こんな風に見えた。

服がめっちゃ好きな人の家に友達が入ってきて、これ気に入ったから着てみるね。あ〜合わなかったわ。またいいのあったら教えてね。また来るわ。バイバイ。

このやりとりに、

「商品を買ってね。」というプレッシャーはないし、「何か買わないと。」いうプレッシャーも全く感じられない。

2つのやりとりには共通点がある

古着屋でのやりとりを見て、業者さんと家主さんのやりとりを思い出した。そこには共通するものがあった。

どちらも、なんだか気のおけない友達同士のやりとりを見ているかのように気持ちになったのだ。

それは、まさにノープレッシャー。

友達が約束の時間に遅れてきたからといって、信頼関係がなくなるようなことはないだろう。笑って許せる。
友達に自分の好きなコレクションを見せて、それに興味を持ってくれないからといって悲しくなるということはないだろう。

相手にプレッシャーをかけないし、自分にもプレッシャーをかけない。

プレッシャーをかけ合わない社会

ベルリンのことはまだ何も知らない、わかっていないからこんなことを言うのかもしれないけれど、少なくとも今日はそう感じたから書きました!

Saika Yuta
written by

1987年生まれ。小学1年でバレーを始める。小·中学校時には計4回全国大会に出場。中学3年時は香川県代表の主将としてJOC出場。高校では、進学校にて春高出場を目指す。大学進学を機にバレーから離れるが高校教員となりバレー指導に没頭するように。そんな日々の中、バレー選手になるという夢を諦めきれていない自分に気がつき、教員を辞めバレー選手となるためドイツ·ベルリンへ。生活基盤が整い始めた矢先、息子が大怪我をして急遽帰国。息子の回復後は北海道へ移住しクラブを設立し、コーチングを生業とするように。その後、縁あって仙台市を拠点に活動するリガーレ仙台(当時:V2リーグ)のヘッドコーチに就任。ワンシーズン指揮を執る。2024年7月より、シンガポールの育成クラブにてコーチング活動に従事。

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