発達段階に応じた指導について考えてみた。

様々な年齢層のプレーヤーを指導してきて思うこと。

それは、発達段階に応じて指導方法や練習方法を適宜変更することの重要性です。

ある発達段階のプレーヤーにとっては有効な指導や練習であっても、発達段階の違うプレーヤーにとっては、有効ではなく、むしろ「害悪」ですらある可能性も孕んでいるということを理解しておく必要があります。

プレーヤーの発達段階を意識して

効果的な指導を行う上で、指導者は指導の対象となるプレーヤーの肉体面・精神面それぞれにおける成長段階を熟知していることが大前提にあります。各年代(小・中・高校生など)での成長特徴をしっかりと理解しつつ、指導のアプローチを変えていくことが大切だと言えます。では早速ですが、各年代毎の選手の成長段階に合った指導法がどのようなものかを考えていきたいと思います。

“プレ”ゴールデンエイジ

3歳から8歳にかけて、「“プレ”ゴールデンエイジ」と言われる時期がやってきます。この時期は運動における多種多様な動作を経験して基本的な運動動作を身につけておくことが最も望ましい時期だと言えます。まだ、自分の身体を思った通りに動かすことが難しい時期でもあるのが特徴の一つです。(右足を出そうとしても左足がでてしまう等)

この時期は特定のスポーツのみに偏ることなく様々なスポーツや遊びに取り組む中で、様々な動作を体験し、それを覚えていくことによって、自分の思った通りに身体を動かすことができるよう訓練することが望ましいと考えられます。

指導の際は、「できるだけ多くの動作を経験させる」ということを念頭において、「バレーボール」という一つの競技に「囚われる」ことなく他のスポーツやゲームライクな練習を取り入れることを検討した方が良いと思います。形式的な動作を反復して身体に染み込ませるような指導は、この時期のプレーヤーには当てはまりません。短期的なプレーの上達ばかりに目を向けていると、「反復」練習ばかりになってしまうことがあるので気をつけるべきだと言えます。

ゴールデンエイジ

次に9歳から11歳にかけて「ゴールデンエイジ」と言われる時期がやってきます。誰もが耳にしたことのあるキーワードだと思います。この時期は、神経系統の発達が著しい時期で適切な動作経験を積んでいけば、自身の思った通り身体を動かせるようになる時期です。

プレゴールデンエイジの時期に基本的な動作を身につけていれば、新しい動作を見ただけですぐに理解して覚えることができるようになります。それまでできなかったことが突然できるようになるなど、スポーツにおいては新しい技術の習得やセンスの良い動きを身につけるのに絶好の時期と言えます。それゆえ、ゴールデンエイジという言葉が注目を浴びているとも言えます。

神経系の動作能力は、「一生身体に残る」ため、最も効果的に能力を高めることができるこの時期に適切な遊びやトレーニングを行うことが重要です。神経系の動作能力として代表的なものには、コーディネーション(協調性・巧緻性)バランス(平衡性)フレキシビリティ(柔軟性)といったものがありますが、これらの特性を十分に高めるためには単調な「反復」練習を繰り返しているだけは十分ではありません。

練習方法を考える際は、「どの特性を伸ばすためのものなのか」といった目標設定を入念に行い、全体として神経系統の動作能力を高められるようにしていく必要があります。指導の際は”プレ”ゴールデンエイジと同様に短期的技術向上を目的とした「反復」練習に終始することは避けるようにしなければなりません。

“ポスト”ゴールデンエイジ

12歳から14歳にかけては「“ポスト”ゴールデンエイジ」と言われる時期を迎えます。この時期になると神経系統は9割型、形作られています。神経系統の成長が徐々に止まるため、短期間での動作能力や技術の急成長は望めなってきます。そのため、それまで身につけた動作や技術の質を向上させていく(機能性の向上)ために、反復練習をしていくなどの必要があります。ただし、単調な練習にならないように、入念に練習計画を立てたり、練習内容にゲーム性(勝ち負け)を盛り込んだりするなどの工夫が求められます。

また男女とも(女子の方が一般的には体の発育が早期である)に身体的な成長が著しい時期でもあるため、体力向上のためのトレーニングも取り入れていくことも必要です。ただ、あまりに負荷の強いトレーニングをしてしまっては、身体の故障を招く可能性があるため、自重のトレーニングなどを中心に、「ほどほどに」おこなったほうが良いと言えます。

青年期へ

15歳〜18歳になると神経系統はほぼ完成した状態と言えます。それまでに磨きをかけた動作能力や技術の質を「さらに」高めていくことが求められます。この時期は、大人の身体に限りなく近づいていく時期であるため、選手「個人」の身体的発達の状況も踏まえながら、これまでよりも負荷をかけた練習を行ったリ、本格的な筋力トレーニングを取り入れ、ストレングス(バワー)やレジスタンス(抵抗力)を高めていくことをすることでパフォーマンスをさらに高めていくこともできます。

知的能力の発達段階にも目を向けて

育成カテゴリーの指導を行なっていく上では、プレーヤーの言語力や思考力、つまり知的能力をしっかりと知っていくことも重要です。当然ながら、小学生〜高校生になるにつれて言語力や思考力は高くなっていきます。小学生1年生の子どもに難しい言葉を使って技術指導をしても、その指導は効果的とは言えないでしょう。そこで、指導者は選手の知的能力(言語力・思考力など)に合わせて指導スタイルを変えていく必要があると言えます。

その際のキーワードは「身体知」と「科学知」です。
「身体知」とは、身体の動きを教えてもらうことなく自然と身につけた動作のことを言い、技能として教えられない技(コツや勘といったものを言葉で表現することはかなり困難である)のことです。
これに対して「科学知」とは効率的で理にかなった動作のことを言い、基本・応用技術として指導者が正確に教えるべき技のことです。これは理論的に言葉を用いて説明することが可能です。

「身体知」「科学知」といった視点から考えると、より年少の選手に指導する際には多くの「言葉による説明」をすることが効果的とは言えないでしょう。なぜなら、知的能力がまだ十分ではないからです。より多くのボールを触り、そこで失敗と成功を繰り返すプロセスをたくさん経験した方がより効率的に様々な動作を身につけることができるでしょう。

選手の年齢が上がるにつれて、思考力は比例して上がっていきます。そのため、中高生への指導などについては「言葉による説明」を使った指導が効果的になる場面は増えていくと言えるでしょう。ただし、「身体知」と「科学知」については、二分論で語ってしまうとおかしいことになってしまいます。どちらかだけのスタンスで指導を行うということは有り得ないため、指導する対象となる各選手の年齢や性格、さらには知的能力などを考慮し、指導方法を変えていく必要があることも決して忘れてはいけません。

プレーヤーを深く理解しようとする姿勢

効果的な指導について考える際、「対象者の発達段階をしっかりと理解した上で、指導アプローチの仕方や練習内容、負荷のかけ方などを変えていくこと」が非常に重要になってきます。(これができればかなり理想的な指導に近づく)。

自身の過去の経験だけに頼って、対象者のことを理解しようとすると間違いが起こる可能性が非常に高くなります。そのため、自身の経験だけに頼ってしまうのではなく「医科学的な根拠」に基づいた情報を収集し、プレーヤーのことを深く理解しようとする姿勢が指導者には求められます。

やはり、指導者は学び続けなければならないのです。

学ぶことをやめたら教えることをやめなければならない。BYロジェ・ルメール

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