海外トップコーチとの会話から育成システムについて考える

日本の育成システムに対する「ほのか」な疑問

日本のバレーボール界の育成システムに対して「ほのか」な疑問を持ちながら、それとなく色々と仮説を立てては試しながらコーチングをしてました。

しかし、海外のバレーボール事情を知れば知るほど、日本の育成システムに対する「ほのか」な疑問はますます積もるばかりなのでした。

その大きなきっかけとなったのが10月1日から5日間の日程で、フィリピンマニラ市内にて実施されたFIVB公認コーチレベル1の研修。ここで出会う人々との会話から、見える世界は一気に広がっていくのでした。

圧倒的アウェイ!!

参加者は私を含め47名。

国際的な資格だからもちろん。国際色豊か・・・。アジアやアフリカからも・・・。え。。。はい。私以外はすべてフィリピン国内からの参加(1名のみアメリカ出身コーチ)でした。

圧倒的アウェイ感の中、研修は始まったのでした。

研修講師はセルビア人のモーロー氏。各国を渡り歩いている方で国際経験も大変豊か。(研修終了後に分かったことですが、ヴォレアス北海道のエド・クライン監督と過去に働いたことがあるということで非常に盛り上がりました。(エド・クライン監督はクロアチア出身。世界は広いと言いますが、狭いのかもしれないと思った瞬間でした。)

さて今回参加した研修は「レベル1」ということで非常にベーシックな内容となっております。まさにバレーボールの基本中の基本です。バレーボールの起源やFIVBの歴史、基本的ルールなど。研修の中で学ぶべきことも多くありましたが、そちらの内容についてはこちらのマニュアルを読んでいただければ十分ご理解いただけるかと思います。日本語訳がないので大変ですが。

こうして5日間の研修は始まったわけですが、基本的に人見知りな私は不安と孤独感に苛まれるところからスタートしました。しかし、陽気で優しいフィリピーナ(フィリピン人のことをちょっとかっこよく言ってみた)のおかげで少しずつリラックスして楽しい時を過ごせるようになっていくのでした。

海外トップコーチから学ぶ

当記事では、コマーシャルリーグ(国内トップリーグ)昨シーズン優勝チームの監督や研修参加者等との会話から考えたことについて書いています。まずは私に様々なインスピレーションを与えてくれたコーチの皆さんをご紹介します。

●タイさん
フィリピン、コマシャールリーグの昨年チャンピオンチームの監督。ちなみに彼はタイ出身。
彼のパーソナリティを一言で表現するなら、「ポジティブマン」
どこまでも前向きにいくところが素晴らしい。ちなみに、彼のあだ名は「ハッピータイ」。会場で会う人会う人に声をかけられ、みんなから愛されていることが感じられる方なのだ。

●エドさん
かれを一言で表現するなら「革新者」
若干20歳代ながら、タイさんのチームのアシスタントコーチを務める。チームのコーチ業だけではなく、母校のコーチングにも力を注ぐ、根っからのバレー大好き青年。彼がすごいのは、妻と一緒にバレーボール普及のために、プライベートで定期的にバレーボール大会を開催している点である。その仕組みがまたアメージングなのである。バレーボール大会の名前はその名もSOLID SEVEN

オクムさん
ケニア出身。フィリピンを代表する大学のバレーボール部監督。彼自身、10年以上もの日本在住歴があり、日本のバレーボール界の課題などについても熟知している。バレーボールに対するストイックさ、考えの柔軟さには本当に驚くばかりである。

こうした超優秀なコーチ陣との会話から何を私が考えたのか。特に深掘りして議論した内容についてまとめていきたいと思います。

フリーポジション制という名のポジション固定システム

海外のバレーコーチと議論をする機会はめったにない。そう思って自身の抱える「ほのか」な育成システムに関する疑問を投げかけるという企画をスタート。仲良くなったコーチにはみんな同じ質問をしてきました。

「フリーポジション制度ってある?小学生特別ルールなんだけど。」

どのコーチにも共通していたのは不思議そうな顔をするといったこと。どうやらフリーポジション制は日本固有のシステムらしい。この制度のコンセプトについて話をしていくと、彼らの顔は「???」で満たされるのでした。フリーポジションという名前とは裏腹にポジションを限定し、プレーまで限定しかねないそのシステムに混乱していたのだろうと思います。

話を進めていけば、「小さい頃にいろんなポジションを経験し、いろんなプレーを経験することが重要」であるという考えが彼らの中には当たり前のように浸透しているように感じました。小さい頃に大会で優勝するとか、全国大会に出るとか、そんなことはまったく重要視していないようでした。こうした考えの彼らのコーチング哲学からすれば、フリーポジション制の存在を理解できないのは当然だろうと思ったのです。

また話は少し外れてしまいますが、フィリピンでは日本のように小学生の低学年からバレーボールをするというのは稀のようです。さらに驚いたのはボールは5号球しかないし、ネットの高さ設定も日本の育成カテゴリと比較すると、総じて高く設定されていました。

こうした日本以外の育成システムについて話を聞く機会は大変貴重な経験でした。日本の育成システム以外を知らなければ、それがすべてであり、その中でしか考えることができないということです。現状、世界で勝てていない日本が自国のシステムしか知らない状態で、いくら育成システムについて考えても現状の育成システムを大きく変えることはできないということです。己を見つめなおすには他を知る必要があるのだと思います。

生物が独自の進化を進めていったことで有名なガラバゴス諸島。日本のガラケー。日本のフリーポジション制。それらを重ねて見てしまうのは僕だけでしょうか?

学校教育ベースド育成システム

エドさんと議論をしているときに大変盛り上がったのが、バレーボールの育成システムが「学校教育ベースドになっている」ということでした。日本でいう「部活動」のことです。フィリピンでも学校教育の一部としてバレーボールのコーチングが行われているというのが現状のようでした。そこで起きている問題は日本と非常によく似通っているのでした。

体罰問題。スキル・意欲のない顧問の存在。指導者不足。バレーボール部の減少・・・

挙げだすとキリがありません。

部活動が育成の場として、十分に機能していた時代もあったと思いますが社会の変容とともに、限界が来ているのかもしれないと感じました。もちろん素晴らしいコーチが学校現場にも多くいることはまぎれもない事実です。しかし、部活動だけに頼る育成システムは限界に達している。そう思うのです。

部活動だけでは賄えきれない部分を地域のスポーツクラブが担っていくなどの解決手段を早急に講じないと本当に手遅れになってしまうように思います。現在も日本では外部コーチの活用事業が進められていますが、それと並行して抜本的な改革も求められると思うのです。そのためには、スポーツコーチングの価値がもっともっと社会の中で認知されていく必要があるのだろうと思います。

日本完結型育成システム

研修参加者の唯一のアメリカ人コーチとの議論の中で質問してみた内容が、「なぜアメリカには国内トップリーグがないのに世界で勝てるんだ?」ということでした。その答えは極めてシンプル。国内リーグがないから海外リーグに挑戦する

確かにそりゃそうだ。

大学卒業後には遅くとも海外リーグにチャレンジしているということだろう。そういえば、ブンデスリーガにもアメリカ人選手がいた。そうゆうことか!!(気がつくのが遅すぎる自分に残念な気持ちになりました)早ければ成人する前に、遅くとも大学卒業時のタイミングでアメリカのトッププレーヤーは海外に挑戦しているのである(のだろう・・・)。

さて、この話を日本に戻してみよう。日本で成人する前に海外リーグに挑戦したことがある人物は何人いるだろうか?おそらくいないだろう。男女含め、歴史的に見ても、石川祐希選手のイタリアへの挑戦が最年少ではなかろうか。

近年、海外リーグでプレーする選手が徐々に増えてきてはいますが、過去を振り返ると海外リーグに挑戦した選手の数は数えるほどでしかいません。

日本が世界で勝つためには、この日本完結型育成システムからの脱却を図る必要があると思うのです。世界のバレーを肌で体感したことがほとんどない選手だけでチームを組んで、世界のバレーを日常的に体感している外国人選手を相手に勝てるのか?

このように考えると、日本のナショナルチームが勝てない理由は意外とシンプルなのではないでしょうか。では、日本人が海外挑戦できる環境を創るにはどうすればいいのか?

できれば高校卒業後から、日本のトップ選手が海外で挑戦できるようなシステムと空気感を醸成することが重要だと思うのです。

海外挑戦にはもちろんリスクがつきものだとは思いますが、そのリスクを取り除いていくれるような、チャレンジの敷居を下げてくれるようなシステム(仕組み、つまりはビジネス)が必要だと考えます。

今のプレミアチームでいうと豊田合成は、選手のリスクを企業努力でヘッジして挑戦の敷居を下げていると思われます(所属は残したまま海外リーグに挑戦できる)。これは一例に過ぎませんが、こうしたシステムが、うまく日本全体で機能しだすと「若いうちから海外に挑戦しよう!」という空気感みたいなものがもっとできてくると思うのです。

若者が海外挑戦できる(もちろん多少のリスクは背負って。ある程度のリスクは力を発揮させる)システムを作るというのは世界で日本が勝つための育成システムを創るということと同義であるとも言えるのではないでしょうか。

▶︎ちょこっとコラム
日本人が海外挑戦する際に絶対的に欠けている道具。それは英語。もしかすると語学的な不安が、海外への挑戦の最大の心理的障壁となっているのかもしれないということ。この障壁はできるだけ若いうちに取り除いておかないとどんどんと大きなものになって取り返しのつかないことになってしまう。英語以外の言語をメインで使う国もあるが、まずは第二外国語として英語をある程度マスターできれば、次の第三外国語とのしての言語獲得への心理的障壁は相当に下がる。

システムは人々の思考、さらには行動を規定する

本記事のまとめとして、言いたいのはシステムというのはよくも悪くも人間の思考や行動を規定するということ。

フリーポジション制度が、コーチの思考を「選手を機械のパーツのように」考えさせてしまうのかもしれません。

学校教育ベースドの育成システムが、スポーツコーチングを受けるのは無料であるという受益者側の考えや、専門的な勉強をしていない人が当たり前のようにコーチングをしている状態を生んでいるのかもしれません。

日本完結型育成システムが、海外挑戦する選手を多く輩出することができず、日本のバレーボール界をガラパゴス化させているのかもしれません。新しいテクノロジーの出現によって世界は急速に変化しています。

この事実をしっかりと受け入れ、その「変化」にあわせて「システム」を変化させていかなければならない。そのように強く思うのです。過去を否定し、新しいものを創るのは多大な痛みとエネルギーを使うというのは間違いありません。しかし、今変わらなければいつ変わるのか?とも思うのです。

コメント

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