現代バレーボールにおいてブロックの重要性は高まるばかりである。
本記事ではルール・ブックを起点にブロックの本質を探っていきたい。
『hit』と『contact』と分けて表記する理由
バレーボールを知るにはまず「ルールから始めよ。」である。
ということでFIVBのルールブックに一通り目を通してみた。
RULE OF THE GAME(VOLLEYBALL)
長い。細かい。
そのような感想をお持ちになった方も多いだろう。
それはさておき、私自身ルールブックを読んで非常に面白いと感じることがあったのでその部分をご覧いただきたい。英語版のルールブックを一部引用する。


バレーボールはその名の通り『volley(打ち返すこと)』によってプレーしないといけないゲームであるわけだが、ルールブック上ではプレー時にボールタッチすることを『hit』と『contact』というと2つの単語によって表記しているのである。
何か意味深い感じがする。
では、それぞれの単語はどのプレーを指しているのか。まず『hit』だがブロック・プレー以外のすべてのプレー(サーブ・レセプション・セット・アタック・ディグ)を指す。これに対し『contact』はブロック・プレーのみを指す。至ってシンプルである。非常にわかりやすい。
が、なぜだろうか?この違和感。
「ブロック・プレーは他のプレーとは区別する必要のあるもの」と主張しているとしか思えない。
そうなのだ。ブロックは他のプレーとは一線を画すプレーなのである。これこそ、ブロックの本質に迫る鍵である。
ルール変遷から見る現代ブロックの誕生
ブロック・プレーはいつ生まれたのだろう。
ルールの変遷を見てみれば分かるが、バレーボール誕生時にブロックという技術は存在していなかった。もっと言うとスパイク(ジャンプして強くボールを打つ技術)も当初の当初は存在していなかったのだ。
スパイクという当時としては新技術が確立された後に、対抗する手段としてブロック技術が確立されプレーとしての重要性を増してきたと推測するのが妥当だろう。ブロック・プレーはバレーボールの発展とともにまらに「産まれてきた」と考えられるのである。
では、ブロック・プレーが『contact』プレーとして明確に『hit』プレーと区別して認識されたタイミングはどこにあるのだろうか。非常に気になる部分だろう。
私の推測の域を出ることはないが、おそらく下記のルール変更のタイミングであると考えられる。約50年前である。
1976:ゲームをよりスピーディーにするため、ブロック後の3回ヒットが認めらるようになった。
The Game – Volleyball Rules
Three ball system introduced and three hits after the block introduced to speed up game.
このルール変更までは、おそらく3回以内の『hit』の1カウントとしてブロック・プレーはカウントされていたと考えられる。このルール変更によってはブロック・プレーは『contact』プレーへと進化したと考えられる。
『contact 』プレーとしてのブロック
晴れて『contact』プレーとして認定を受けたブロック・プレーではあるが、ここである疑問が生まれくる。
なぜ『contact(接触)』という言葉が採択されたのか。
どんな意図がそこにあるのだろうか。
バレーボールはバスケットボールなどの「コンタクト・スポーツ」ではない、「非コンタクト・スポーツ」である。
ここからも、あくまで私の推測の域を出ることはないのだが「非コンタクト・スポーツ」であるバレーボールのプレーの中でも、ブロック・プレーというのが限りなく「コンタクト・プレー」に近いプレーであるということを表現したかったのではないだろうか。
また、ブロック・プレーはネット上を超えて相手コートに身体の一部を侵入させること(ペネトレーション)が唯一許されているプレーである。相手のアタック・プレーに対して最も接近して、よもや相手プレーヤーとコンタクトしているようにも見えなくもない激しいプレー、それがブロックなのである。
プレーヤーによって自然発生的に生まれたブロックというプレー
ブロックの本質を一言で表現するなら、「リ・クリエーション(再創造)」である。
バレーボールの産みの親であるモーガン氏の「創造」を超えて、世界中で多くのプレーヤーたちによってバレーボールがプレーされるようになり、リ・クリエイト(再創造)されたプレー、それがブロックなのだ。そうして生み出された魅力あるプレーが先述した通りバレーボールのルールまで変えたということなのである。
そもそもスポーツという存在自体が「リ・クリエーション」であるわけだが、ブロック・プレーはバレーボールという一つのスポーツの体内で起こった「リ・クリエーション」の好例だと言えるのかもしれない。スポーツは多くのプレーヤーにプレーされることによって常に進化し、「リ・クリエイト(再創造)」を繰り返す。まるで生き物のようである。
『contact』プレーとしてのブロックのまだまだ歴史は浅い。
つまり、そこはまさにフロンティア。
今まさにブロック・プレーに関する技術や戦術は広く言語化され、そのレベルは向上している最中である。まだまだ発展途上のプレーなのだ。今後、ブロック・プレーの存在感はますます高まるばかりである。
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