カテゴリー横断型育成システムのグランド・デザインを描こう

今年の夏は幸運にも多くのバレーボールコーチと意見交換する機会を得ることができました。そして、数多くの会話から痛感したこと。

それはカテゴリー横断型思考を持ってコーチングにあたること。それと、カテゴリー横断型育成システムのグランド・デザイン(全体構想)を自分なりに描いておくことの重要性です。

各カテゴリーにおける課題や現状

バレーボールコーチの研修会に参加した際には、普段なかなか会えない様々なカテゴリーのコーチたちに出会うことができました。小学生からプレミアリーグまで、全カテゴリーのコーチと話をする貴重な時間を持つことができました。

そして、会話の中ではコーチング現場のリアルを色々と聴くことができました。普段、私は小学生にコーチングを行うことがメインであるため、その他のカテゴリーでのコーチング現場で起こっている課題や現状について聴くのはとても新鮮で興味深いものがありました。その中でも、特に次に挙げたようなことがとても印象的でしたので紹介します(あくまで一例です)。

小学生カテゴリーコーチ

  1. 低学年へのバレー技術指導(オーバーハンド・パス等)が困難である
  2. 体罰やパワハラが横行している
  3. ポジション・プレーの固定化が当たり前になっている

中学生・高校生カテゴリーコーチ

  1. オーバー・ハンド・パスができない(キャッチしてしまう)
  2. 休みがほとんどない状況である(ブラックな職場環境※部活動指導)
  3. 1年スパンでチームを完成させないといけない

プレミア・リーグのコーチ

  1. 燃え尽き症候群的なプレーヤーが存在している
  2. 背の高いプレーヤーのレシーブスキルが低い
  3. 1シーズンの結果を見てコーチが評価される

各カテゴリーにおける課題や現状は、他カテゴリーと相関している

さてここでは、改めて先に列挙した課題や現状をカテゴリーを横断して眺めてみましょう。どうでしょうか?

ここに列挙された課題や現状は各カテゴリーだけで完結するものではなく、次のカテゴリー、さらに次のカテゴリーの現状や課題と相関しているということに気がつくのではないでしょうか。

例えば、小学生カテゴリーの「低学年へのバレー技術指導(オーバー・ハンド・パス等)が困難である」という課題は、中学生カテゴリーの「オーバー・ハンド・パスができない(キャッチしてしまう)」という課題につながっていきます。(※小学生カテゴリーで適切な技術的コーチングができないまま、中学生カテゴリーへと進んでしまうという課題)

また、小学生カテゴリーの「ポジション・プレーの固定化が当たり前になっている」という現状はプレミア・リーグの「背の高いプレーヤーのレシーブスキルが低い」という現状につながっていきます。(※バレーボールをスタートした際、相対的に身長が高いと、ブロックやアタックなどの身長の優位性を生かしやすいプレーに特化して練習を繰り返す。その結果、レシーブスキルを身につけることのないまま、次のカテゴリーに進んでしまうという現状)

さらに中学生・高校生カテゴリーの「1年スパンでチームを完成させないといけない」という現状はプレミア・リーグの「1シーズンの結果を見てコーチが評価される」という現状と非常に似通ったものであるように感じます。(※1年といった短期スパンで試合に勝つという結果だけを求めらてしまい、プレーヤーの長期的な育成や成長に力を注げないという現状)

ここに挙げた課題や現状を打破していくためには、一体どうすればいいのでしょうか。対処療法的にそれぞれのコーチが孤軍奮闘するだけで十分なのでしょうか。

全カテゴリー横断型思考を身につけ、他カテゴリーへ積極的に関わる

私は、各カテゴリーコーチが自分のカテゴリーの育成だけを考えて行動しているだけでは、現状の課題を解決していくことはできないと思っています。そこで、コーチに求められるのが「カテゴリー横断型思考」だと考えます。

私が考える「カテゴリー横断型思考」とは、自分がコーチングしているカテゴリーは全カテゴリー(未就学・小学生・中学生・高校生・大学生・プロ・社会人…)のどこに位置しているのかを理解し、自分のコーチングするカテゴリーにおいて、何をゴールにして、どんな手段をもってコーチングしていくのか考えることを指します。

そのためには、当然「他のカテゴリー」におけるコーチングの目的や手段についても考えたり、知る必要(勉強する必要)があります。そのためには「他のカテゴリー」のコーチと積極的に意見交換を図ったり、交流することも重要になってくると思います。

自身のコーチングするカテゴリーだけに目を向けているとどうしても、近眼的になってしまい本来のコーチングのゴールを見失ってしまい、誤ったコーチングをしてしまうことにつながってしまうように思います。

もちろん、こうした思考を身につけられたとしてもすぐに目前の課題を解決することに繋がらないこともあるかと思います。しかし、コーチは常にプレーヤーの過去や未来にしっかりと想いを馳せながら、どうすれば彼ら・彼女らはバレーボールを通じて幸せになれるのか常に探求しながらコーチングに徹することが求められると思うのです。

カテゴリー横断型育成システムのグランド・デザイン(全体構想)を描いてみる

カテゴリー横断型思考を身につけることができれば、さらに「カテゴリー横断型育成システムのグランド・デザイン(全体構想)」を自分なりに描ければ素敵だと思います。

どうすれば、今コーチングしているプレーヤーが、長期スパンで見て、最高のプレーヤー人生を送ることができるような環境を作れるのか?自分の直接関与しないカテゴリーも含めて、詳細に育成システムのグランド・デザインを描いてみるのです。

一人でグランド・デザインを描いてみたところで完璧なグランド・デザインが完成するということはまずあり得ません。しかし、まずは描いてみてそれを他のコーチに共有してみるというところから始めてみるのが良いと思います。

こうして、この記事を書いている私自身も未だカテゴリー横断型育成システムのグランド・デザインを描いたことはありません。しかし、稚拙でも、他のコーチから非難されようとも、自分なりにカテゴリー横断型育成システムのグランド・デザインを描いてみるという作業をまずはやってみたいと思っています。

このグランド・デザインを描くという作業は、まさに「重要であるが、緊急性がない」タスクであると思います。しかし、この部分をなおざりにしている限り、育成システムの根本的な解決には繋がりません。

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