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ライフ・ワークはバレーボール探求。本サイトでは、バレーボールに関する情報を発信しています。また、バレーボール・アカデミーの経営・コーチングをしています。

【資格】国際バレーボール連盟(FIVB)公認コーチ Level2/日本スポーツ協会 コーチ4/バルシューレジャパンC級指導者/中高教諭1種免許(英語)

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フリオ・ベラスコの考える『システム』と『創造性』

フリオ・ベラスコ。誰もが知るバレーボール界の名将。

たまたま目にしたツイッターにアップされていた彼のインタビュー動画に感銘を受けたので、文字情報として残しておきたいと思い、本記事を書くに至った。

まずは、インタビュー全編を下記に記しておきたい。たった数分のインタビューであるにもかかわらず、彼のバレーボール・コーチとしての哲学を痛烈に感じることができる。

インタビュア:世界最高の選手がいたとしてもチームコンセプトを持っていないといけないものでしょうか。

フリオ・ベラスコ:間違いない。

インタビュア:それは絶対欠かせないものですか?

フリオ・ベラスコ:欠かせないという意味ではない。チームが持っているシステム(ゲームモデル)というのは選手によって適応するんだ。もし世界最高の選手を持っているなら、その選手が世界最高のプレーをするためのシステムが必要なんだ。そうゆう問題なんだよ。システムというのは絶対的なルールというような物ではないんだ。システムは試合で発生するノーマルなシチュエーションを解決するものだ。

インタビュア:状況を解決する為にシステムはあるということですか?

フリオ・ベラスコ:想定の範囲内の状況、スタンダードな状況を解決するものだ。もし相手がシステムを壊してきたらそれを解決する個人の能力が必要になる。これは交通ルールと一緒だ。道路交通はシステムのようなものだ。

インタビュア:道路交通はシステムですか?

フリオ・ベラスコ:そうだよ!どこで止まって、いつ止まるか又は止まらないかが決まっている。

インタビュア:そして?

フリオ・ベラスコ:もし交通ルールが無かったらとんでもないことになる。そして、もし自分の目の前の車が突然心臓発作を起こして車が急停車したらそれを避ければ助かるし避けられなければ終わりだ。

インタビュア:素晴らしいです。これ以上ない説明だと思います。つまり想定外の状況ではシステムが解決するのではなく個人の能力で解決しなければいけないということですね。

フリオ・ベラスコ:そうゆうことだよ!例えば守備でシステムがあるのに味方が突然プレッシャーに出たら…

インタビュア:ではあなたはどちらを好みますか?フリオさん本当に素晴らしいです。敬意を示したいと思います。システムが解決する事とタレントが解決するのとどちらを好みますか?

フリオ・ベラスコ:誰が?

インタビュア:あなたです。チームのリーダーとして。

フリオ・ベラスコ:自分にとって?両方です。私はシステムで状況を解決できない時に選手に創造性を発揮することを強く求めます。ただチームとして試合でやることをトレーニングします。システムは道路交通と共通する部分があります。それは重要じゃない事に頭を使ってはいけないということです。そうすれば創造性を発揮する為の脳のエネルギーを残すことが出来る。

いかがだっただろうか。感銘を受けた方もいるのではないだろうか。

ここからは私のこのインタビューに対する解釈をまとめていこうと思う。

『システム』とは

彼の考えるシステムとは。

インタビューの中で、システムを道路交通に例えている。

道路交通とは言わば交通ルールであり、信号であり、標識であると言える。僕らは道路交通というシステムを学び、それに従うことによって、自動車や自転車、徒歩といった様々な手段で安全に移動することができている。

これをバレーボールに置き換えて考えてみるとこんなふうに考えることはできないだろうか。

プレーヤーは、バレーボール・ルールに基づいて構築されたチーム・システム(フォーメーション・戦術など)を学び、それに従うことによって、適切なプレーをすることができている。

移動にせよ、バレーボールのようなチーム・スポーツにせよ、適切なシステムさえ導入することができれば合理的に目的を達成することができるのだ。

移動であれば安全であること。バレーボールであればゲームに勝つことである。

システムとは目的を合理的に達成するための一つの手段なのである。

『システム』が機能しないケース

適切なシステムの導入によって、目的を合理的に達成することができることに間違いはないが、現実問題としてシステムが想定した範囲を超える事象も起こるだろう。

道路交通で言えばインタビュー記事にもあったように「目の前の車が突然心臓発作を起こして車が急停車する」といったケースだろうし、バレーボールで言えば、採用しているシステム(フォーメーションや戦術など)が相手チームに全く通用しないといったケースだろう。

こういった想定外のケースが起こったとき、急遽システムを変更することも一つの選択肢ではあるが、必ずしも有効だとは言い切れないこともあるだろう。では、そんなときどうすればいいのか。

『システム』の外で個が対処する

そんなときは「システム」の外で個が対処するしかないのである。

通常運転時であれば、システム外で対処することは望ましいことではないはずだ。システムを壊してしまい、合理的な目的達成への道を塞いでしまうからだ。

しかし、システムの外で起こった、つまりシステムでは対応しきれないことに対しては個が「システム」の外に飛び出し、個の力で対処するしかない。そして、ここで必要とされる能力は「システム」の中で求められる能力とは全くもって違ったものだ。

「システム」の中では決まったことを決まった通りに遂行する能力が求められ、「システム」の外では、答えのない中で一つの仮説を見出し、それを実行することによって問題を解決しなければならない。

では、「システム」の外ではどんな能力が求められるのだろうか。

『創造力』という個の力

答えのない問題に対し、自分なりの仮説を実行し、問題解決する能力。それは、つまり創造力だ。

想定の範囲から逸脱した状況を解決するには創造力が必須なのである。システムの中で起こる事象に対処するには、システムを理解した上でそうした状況を反復経験すればある程度のレベルにはなる。道路交通で言えば、誰でも自動車免許取得してそれなりに運転すれば一定レベルで走行できるということだ。

しかし、創造力についてはなかなかそうはいかない。

常にシステム外で起こる想定外の事象に対処しなければならないのだから。では、創造力はどのように醸成していけばいいのだろう。

『創造力』を醸成するために

システム外で起こる想定外の事象への対処能力。つまり創造力は一石二鳥には養われない。

創造力は強制的にも、効率的にも、短期的にも醸成することができない。

自発的かつ、非効率的かつ、長期的に醸成されていくものである。

無駄(遊び)が必要なのだ。

バレーボール・プレーヤーであれば、例えば次のような無駄が創造力を醸成してくれるのではないかと思う。

・ポジションを固定せずに全てのプレーを楽しむ
・遊びの延長線上でバレーボールを楽しむ(ビーチバレーなど)
・バレーボール以外のスポーツにも親しむ
・読書をしたり、バレーボール以外の楽しみをもつ

『システム』と『創造力』のバランス感覚

最後にあえての愚問を。

『システム』と『創造力』はどちらが大切か。

無論、どちらも大切だ。

システムがなければカオスだし、創造力がなければ不慮の事態に無力である。

ベラスコ氏が考えるシステムと創造力はチームの両輪であって、どちらも欠けてはいけないものなのだろうと思う。彼はおそらくこのバランス感覚が非常に長けているのだろう。

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