小学生バレーの特別ルール「フリーポジション制」について考える。

今日は小学生バレーボールの特別ルール「フリーポジション制度」について考えていきたいと思います。

フリーポジション制とは

まずはじめにこの制度について調べてみました。

・通常ローテーションをすることが求められるがその必要がない。
・小学生にのみ適用される特別ルール。
・1992年から公式戦で適用されている。
※それまでは「バックセンター固定制」という一部ポジションのみが固定可能であるという特別ルールが適用されていた。さらにそれ以前は、特別ルールは設けられていなかった。
一緒に読むと理解が深まる:全日本バレーボール小学生大会の歩み

フリーポジション制を導入した狙いとは

ミュンヘンオリンピックで見事優勝した男子バレー監督でもあった松平康隆によって提唱されたフリーポジション制ですが、どのような狙いがあってこうした制度が生まれたのでしょうか。

まずフリーポジション制について考える前に、「バックセンター固定制」まで遡る必要があるのかもしれません。この制度の「バックセンターのみポジションを固定する」という意図は、おそらく身長の小さい選手が活躍できるポジションを作ろうといった狙いなのかと想像がつきます。リベロ制度の原型のようなものと考えればいいのかもしれません。

それでは、フリーポジション制についてはどうでしょうか。

バックセンター固定制と同じく、低身長選手に対する配慮という意図も汲めなくはないと思います。しかし、6人制バレーボールのルールの根幹をなすともいえる「ローテーション」という概念を完全に排除したものというようにも捉えることができます。ローテーションのルールがあるからこそ、そこに多くの戦略や戦術が生まれて、バレーボールをより面白いものにしているというのは否定できない事実です。

インターネットでくまなく情報を検索してみましたが、フリーポジション制の狙いや意図について書かれた公式情報というものは、ネット上には存在していませんでした(私が日本語検索をした範囲において)。

【2018年12月31日加筆】
そもそもフリーポジション制度のコンセプトや目的について、きちんと言葉で共有されていないという状況が非常にまずいと思います。コーチによって、この制度に対する考えがかなりバラついているように思います。

また蛇足ではありますが、「フリーポジション」という言葉で検索したときのヒット件数の少なさには正直驚きました。小学生のコーチが持論としてブログで書いているものがいくつかある程度です。この制度について、考えを持って発信している人が少ないということは、バレーボール関係者の多くにとって「フリーポジション制」はもはや誰もが認める「常識」となっているからなのかもしれません。

フリーポジションの弊害

ここから私個人の意見として「フリーポジション制」に対する考えをまとめていきます。

上記ツイッターで紹介している記事の一部を抜粋してみました。お読みください。どのような感想を持つでしょうか。

彼女はサーブレシーブができる長身アタッカーだったが、子供の頃はそれほど身長が高くなく、レシーブの練習を主にやってきて、成長期にぐっと背が伸びた特異な存在だ。

この一文に対して、私は違和感を感じずにはいられませんでした。なぜならこの一文からは裏を返せば、以下のような意味が読み取れるからです。

小学生時、長身である選手は主にレシーブの練習をしない(主にスパイクをする)。そしてそのまま長身選手であり続けた選手はレシーブができない。

この話がそうであるとするならば、これは「フリーポジション制の弊害」なのではないかと考えました。
そして、自身の見聞きした経験を元に考えてみても、そのように感じるのです。

私がこれまでみてきた多くの小学生チームの戦い方を一言で表すと

完全分業制」です。ローテーションのルールがないフリーポジション制のため、この戦い方が実現します。

・トスを上げる選手
・レシーブをする選手
・スパイクとブロックをする選手(ひどい時はブロックだけする選手)

確かに短い練習時間の中で、目先の勝利を目指すとこの完全分業制が効率的に勝利に繋がることがあるのかもしれません。

【2018年12月31日加筆】
まさにこれを勝利最短主義と言うのかもしれません。

しかし、子どもたちのバレー人生はその先も続いていきます。

ゴールデンエイジの子どもたちに一部のプレーしかさせないというのは、その子のバレー人生の可能性という観点からも、バレー界というもっと大きな観点からも大きな損失だと思うのです。

もちろん選手の未来を見据えて、すべての選手にすべてのプレーをたくさん練習させるよう工夫している指導者の方々も多くいらっしゃると思います。しかし、そうでない割合の指導者が圧倒的に多いように感じています。

小学生チームの監督に「完全分業制」の採用を加速化させている装置が実は「フリーポジション制」なのではないかと思うのです。

木村沙織をレジェンド化してはいけない

小学生の時に低身長でバレーセンスに長け、レシーブ練習をしっかりしてきた。そして、中学生・高校生になってから急激に身長が伸びてスパイクもできるようになった。こうしてオールラウンドプレーヤーになった木村沙織元選手。

また現在、日本男子バレー史上最高の逸材と呼ばれている石川祐希選手も小学生時は決して大きい選手ではなく、中学・高校で一気に身長が伸びたパターンの選手。

こうした高身長ながらオールラウンドにプレーできる選手を「稀有な存在」として「レジェンド化」してしまうのか。

それとも、こうした選手らを自然に輩出できるような環境や仕組みやを真剣に考え、新たに作り直すのか

日本バレーの大きな分かれ目となると思うのです。

もし、フリーポジション制がなくなったら。

これまで、ネットにへばりついているだけの選手がレシーブ練習する機会を多く持つことができるかもしれません。

これまで、スパイク練習を一回もしたことがない、ステップも知らなかった選手がスパイク練習する機会を持てるようになるかもしれません。

こうした変化が自然と起こってくるのではないでしょうか。

監督も、試合に勝つためには、選手がどのプレーもできないと勝てないということにすぐ気がつくでしょう。
そうすれば、どのプレーも高いレベルでできる選手がこれまで以上に多く輩出されるのではないかと想像してしまうのです。

フリーポジション制については議論が必要

これまで長く採用されている特別ルールであるため、ルールをもし変更するのであれば慎重な議論が必要だと思います。

ここに書いたことは私の個人的な考えであり、そうでない考え方についてもたくさん知りたいと思っています。
そう意味でもこの記事が今一度、「フリーポジション制」について考えるきっかけになれば嬉しく思います。

【2018年12月31日加筆】

将来を見据えてた育成カテゴリーのコーチングについて考えていく中で、やはりどうしても「フリーポジション制度」に対する疑問が多く湧いてきました。そのために、この制度の是非についてツイッター上での投票を行ってみることに。その投票を通じて、考察を深めることができましたので記事を書きました。ここに紹介しておこうと思います。

また、2018年10月に参加したフィリピン・マニラ近郊にて開催されたFIVB公認コーチレベル1の研修に参加した際に、フィリピンのトップコーチとも「フリーポジション制度」について議論してきました。そこでの議論内容についても、下記の記事に寄稿しています。併せてお読みください。

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