勝つことはすぐれた育成と両立できる
『勝利』と『育成』の両立。育成カテゴリーのコーチにとっては永遠のテーマなのではないだろうかと思う。
プレーヤーの未来を大切にし、長期的な視点にたってコーチングを実践しようと考えるコーチであれば、一度はこうしたジレンマに陥ったことがあるはずである。
『勝利』と『育成』の両立
私も多分にもれず、この『ジレンマ』に陥っているのだが、『勝つことはすぐれた育成と両立できる』という言葉に下記の書籍を通じて出会ってからこの『ジレンマ』から抜け出せるのではないかという気配を感じている。

ちなみにこの言葉は、サッカープレーヤーとして、またサッカーコーチとしても超一流であるジョゼップ・グアルディオラ・イ・サラ氏による言葉である。
ではなぜ、こうした言葉が彼から出てきたのだろうか。
早速ではあるが、上記書籍から特に私にとって印象的であった彼のインタビューを抜粋して紹介しよう。このインタビューを読めば、彼の言う『勝利と育成の両立』が意味することをもう少し肌感をもってもらうことができると思う。
少なからず私に関しては、このインタビューから勝利と育成の両立はできるという彼の信念を理解する一歩を踏み出せたと感じている。
選手交代で時間稼ぎをし勝利を引き寄せるというのが適切かどうかは議論の余地がある。逆に『5対0ではなく9対0で勝て』と、レベルの高い選手ばかりにプレーさせ補欠選手にプレーするチャンスを与えないというのも考えものだ。だが本質として、すべての選手たちの胸に『バルサでは勝つことのみに価値がある』と刻みつけることは必要だ。こういうことも、育成では大事なんだ。
ジョゼップ・グアルディオラ・イ・サラ
勝利なしにすぐれた育成は成り立たない
彼は上記のインタビューを通じてこう言いたかったのではないだろうか。
「全てのプレーヤーに成長の機会を提供することは育成において極めて重要だ。しかし、勝利に対する優先順位(プライオリティ)を高め、どこまでも勝利に対して貪欲になること。そうすること自体が、プレーヤーの成長を加速化させ、その結果としてすぐれた育成も同時に成り立つのだ。」
『勝つことはすぐれた育成と両立できる』は別の言い方をすれば、『勝利なしにすぐれた育成は成り立たない』とも言える。
誤解を恐れず言うならば、これまで私は優れた育成を実践するためには、勝利を犠牲にしなければならないと考えている節があった。
しかし、それは違うのかもしれない。
勝利とは実は、本当に優れた育成にとってのエッセンスなのである。
勝利がすべてではない。しかし、勝利を放棄した育成は本当の育成ではないのである。