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ライフ・ワークはバレーボール探求。本サイトでは、バレーボールに関する情報を発信しています。また、バレーボール・アカデミーの経営・コーチングをしています。

【資格】国際バレーボール連盟(FIVB)公認コーチ Level2/日本スポーツ協会 コーチ4/バルシューレジャパンC級指導者/中高教諭1種免許(英語)

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バレーボールのゲーム構造についての考察

バレーボールが大好きで、普段の生活の中から生まれる思考すべてをバレーボールに繋げてしまうような筆者である。

さて、ここのところはずっとバレーボールとは一体どういったゲームなのだろうかということを考えている。バレー用語といった切り口から考えてみたり、好きなチームのゲームモデルを言語化してみることでバレーボール・ゲームの本質を探ってみたり。はっきり言って実利などは度外視して、心が赴くままにバレーボールを探究している感じである。

こんな幸せは他にはない。

これまで様々な切り口からバレーボールについて考え、その時々気がついたことや考えたことを言語化してきたが、今最も私の興味が注がれているのはバレーボールのゲーム構造である。

バレーボールを探究するようになってから、バレーボールについて多くの人と議論することも増え確かに知識は増えた。また、多面的にバレーボールを眺めることができるようになってきたように思う。がしかし、今持ち合わせている知識は残念ながらでっかいおもちゃ箱にガシャっと無理やり詰め込まれただけで整理整頓ができている状態だとはとても言えない。カオスなのである。そこで、もっとバレーボールを体系的に、構造的に捉えてみたいという欲求が強く湧き上がっている。

前置きは少し長くなってしまったが、本記事ではバレーボールのゲーム構造についての考察を深めていくことでバレーボール・ゲームに対する理解を深めていくことを主眼にしたい。

バレーボールのゲーム構造を階層化する

バレーボールの階層構造を私なりに図式してみたのが下記の図である。私の執筆する記事ではよくあることなのだが、まだまだプロトタイプ段階の図であることをご了承いただきたい。本記事を読んだ読者からの鋭い指摘や意見によって下記の図が改善していくのであれば、それは筆者にとって大きな喜びである。

局面(DIMENSION1, DEMENSION2)の定義

バレーボール・ゲームの階層構造を捉えようとする際にとても重要だと思っていることがある。それは、局面(DIMENSION)の定義である。以前、サッカー・ゲームで一般的に使われている局面定義をそのままバレーボールのゲームに当てはめて考えようとしたことがある。しかし、どうしても無理がありうまくいかなったという経験がある。人によって解釈に大きなバラつきが起こってしまったのである。

この苦い経験からやはりバレーボールのゲームにはバレーボールのための局面定義が必要であると学んだのである。それからというものどのように局面を定義すれば、ある程度のコンセンサスを得られるのだろうかという模索をしてきた。ここでは、現時点における私の結論をお示ししてみたい。まず大枠として下記のように局面を定義してみたい。

DEMENSION1 1. SET(セット・プレー局面) 2. RALLY(ラリー・プレー局面)

バレーボール・ゲームの局面は上記の2つによって定義できると考えている。もう少し局面を細分化したものが下記である。ご覧いただきたい。

DEMENSION2

▶︎SET(セット・プレー局面)における
1. Service(サービス局面)
2. Defense(ディフェンス局面)
3. Attack(アタック局面)

▶︎RALLY(ラリー・プレー局面)における 
4. Defense(ディフェンス局面) 
5. Attack(アタック局面)

上記5つによる局面定義があれば、バレーボール・ゲームの階層構造を理解する大きな助けにもなるだろうと考えている。大枠の局面定義だけではバレーボールの階層構造について考える際に役立たないが、あまりに詳細な局面定義だけでは構造の全体感を掴みにくい。しかし、こうして大枠の局面と詳細な局面を併用することによって両方のメリットを享受することが可能となるのである。

階層その①RULE(ルール)

さて、ひとまずは局面の定義ができた。次に階層構造の最もベースとなる階層から順々に眺めていきたいと思う。まず、バレーボールのゲーム階層構造を理解する上で最も重要なものは言わずもがなRULE(ルール)である。バレーボールの本質を言語化したものとも言えるだろう。ルールとは文字通り、バレーボールを「支配する」ものなのである。下記に、FIVBが発行しているルールブックのリンクを貼っておく。

RULES OF THE GAME | VOLLEYBALL

下記の図ではルールを黄色で示している。そして、このレイヤー(層)では『hit』と『contact』、2つの単語が出てくることにご注目いただきたい。

1. hit(ヒット)…ブロック・プレーを除くすべてのボールタッチ 2. contact(コンタクト)…ブロック・プレーでのボールタッチ

FIVBが発行しているルールブックでは下記の通り『hit』と『contact』の2つの単語を使われている。

2つの単語を使うことによってボールタッチの種類分けを行うことは些細なようでありながら、実は重要な意味を持っている。『hit』はブロックを除くすべてのプレーにおけるボールタッチを指し、『contact』はブロック・プレーでのボールタッチを指している。このことは、ブロック・プレーが他のプレーとは一線を画していたものであるということを示している。この違いを理解することはブロック・プレーの本質とは何かということを理解する際の手がかりになるだろう。

階層その②PLAY(プレー)

さて、ルールブック上ではボールタッチの定義は先述した通り2つの単語で表現されていたが、これをさらに具体化したものがここで説明するレイヤー『PLAY(プレー)』である。下記の通り5つに分類される。

1. serve(サーブ)…サーブ・プレー 2. reception(レセプション)…サーブレシーブ・プレー 3. dig(set)(ディグ(セット))…レセプションとブロックを除くすべてのディフェンス・プレー 4. attack(アタック)…相手コートへボールを返球するプレー 5. block(ブロック)…ブロック・プレー

それでは、一つずつ解説していきたい。
1つ目の『serve』はサーブ・プレーを指している。セット・プレー局面で一番最初に発生するプレーである。

2つ目の『reception』はレセプション(サーブレシーブ)・プレーを指す。日本では、サーブキャッチやサーブカットといった呼び方がされることもあるが、これは一種の俗語(スラング)だと理解いただき、使用は控えていただくことが賢明である。特にコーチには気をつけてほしい点である。

3つ目の『dig (set)』についてだが、ここについては誤解が生まれやすい部分であるので慎重に解説していきたい。『dig』は英語で「掘る」という意味がある。相手チームの強打スパイクを床近くでボールヒットする姿から連想してネーミングがなされたことからも、この言葉が相手チームの強打スパイクを拾う行為のみを指していると誤解している人が少なくないようである(実際、私も少し前までまさに誤解していた)。

しかし『dig』とはもう少し広い概念を表す言葉であり、レセプションとブロックを除くすべてのディフェンス・プレーを指している。強打スパイクを拾う行為だけではなく、例えば相手プレーヤーのアンダー・ハンド・パスによるボール返球を拾うといったプレーも『dig』と呼ぶのである。当然、相手アタッカーのチップを拾うプレーも『dig』である。

また、これも非常に誤解が多いのだがチーム内で2本目としてカウントされるボール・ヒットで、チーム内のアタッカーにボールを供給するというプレーも『dig』なのである。

「いやいや〜、チーム内で2本目のボールをアタッカーに供給するプレーは『set』でしょう〜。」

と突っ込みたくなった人は多いだろう。

事実、私もその一人である。実際のところ、この指摘は間違えていないようにも思う。なぜなら、現代バレーボールにおいてセッター(setter)という存在は欠かせない存在であり、セットの質がゲームの結果に甚大な影響を及ぼすというのは紛れもない事実である。『set』プレーなしに考えることも、語ることももはやできない。ただ、階層的には『dig』のほうが、『set』よりもより下層に位置しているという認識だけは持っておくと良いだろう。そのため、本記事では『dig (set)』という表記をさせていただいている。ご理解いただきたい。

4つ目の『attack』とは文字通り「攻撃」という意味を持つ。しかし、ここでおさえておきたいことは攻撃の意思の有無は一切関係しないということである。相手コートへボールを返球するプレーはすべて『attack』なのである。それが強い攻撃の意思を伴ったスパイクによって実現したプレーであっても、なんとかチーム内で繋いで相手コートに返球しただけのアンダー・ハンド・パスによって実現したプレーであってもそれはやはり『attack』なのである。

5つ目の『block』はブロック・プレーを指している。文字通り「妨害する」という意味を持つ。ブロック・プレーの本質を理解するには前章(階層その①RULE(ルール))でも先述した通り、唯一の「contact」プレーがブロック・プレーであるという点に注目する必要がある。

階層その③WAY to play(プレー手段)

さて、ここまではバレーボール・プレー(行為)について2つのレイヤー(階層)に分けて整理・解説してきたが、次なるレイヤーはプレーするための手段である。バレーボールをプレーをする上で、どのような手段を講じることができるのかという話である。前章で先述した5つのプレーを遂行するためにはどのような手段があるのか整理していこう。下記では、各プレーにおける手段(方法)の一例を記したい。

1. serve(サーブ)
float(フローター), jump-float(ジャンプ・フローター), spike(スパイク), hybrid(ハイブリッド)
2. reception(レセプション)
under-hand-pass(アンダー・ハンド・パス), over-hand-pass(オーバー・ハンド・パス)
3. dig(set)(ディグ(セット))
under-hand-pass(アンダー・ハンド・パス), over-hand-pass(オーバー・ハンド・パス)
4. attack(アタック)
spike(スパイク), tip(ティップ), off-speed-shot(オフ・スピード・ショット), wipe-off(ワイプ・オフ)
5. block(ブロック)
block(ブロック)

上記には、各プレーにおける代表的なプレー手段の一例を列挙していることをまずはご了承いただきたい。例えば『attack』プレーの手段には『under-hand-pass』や『over-hand-pass』も当然含まれてくるが、ここでは分かりやすさを優先して記載していない。

また、プレー手段はバレーボール・ゲームの発展とともに変化していくとも考えることができる。その最たるものが『serve』プレーの手段にある『hybrid(ハイブリッドサーブ)』ではないだろうか。近年、トップカテゴリのゲームで見られることが増えてきたが、10年前を振り返ってみるとおそらくそのようなサーブは存在すらしていなかったはずである。こうして考えてみるとこのレイヤー(プレー手段)は普遍的なものではなくバレーボールの発展・進化、トレンドとともに移り変わっていくものだとも言えるのではないだろうか。多くのプレーヤーによってプレーされることによってはバレーボールは日々再創造(リ・クリエート)されているとも言える。

WAY to play(プレー手段)を構成するモノたち

プレー手段について整理できたところで、次の問いを立ててみたい。

プレー手段は一体何によって構成されているのだろうか?

現時点での私の回答は次の通りである。

プレー手段は、技術と技能と戦術(個人・チーム)を必要とする。

う〜ん。正直これではなんのこっちゃ分からない。読者の方に伝わる気がしない。そこで、具体的に一つプレー手段をピックアップして説明してみようと思う。本記事ではバレーボール・プレーヤーであれば、みんな大好きな『スパイク』を例に考えてみたい。

口説いようではあるが、スパイクとは、アタック・プレーを実現するためのプレー手段の一つである。そして、まず結論として『スパイク』を構成するものは技術と技能と戦術(個人・チーム)であると言っておきたい。これを下記に図式化しているので参照いただきたい。

それでは、一つずつ見ていこう。
まずは技術(techs)について。

『技術』の定義であるがここでは、スパイクの動作を完遂するために必要な身体活動とする。大きくは次のように整理できると考えている。

・approach(助走) ・jump(ジャンプ) ・swing(スイング)※テイクバック+フォワードスイング ・landing(着地)

上記それぞれの身体活動が連続して行われることによって、スパイク動作が完成すると考えられる。

次に技能(skills)と個人戦術(personal tactics)について。
まず、『技能』の定義だが、ここでは先述のスパイク技術を行使して、チームの得点に寄与するプレーをするために必要とされる能力としたい。

そして、『戦術(個人)』についての定義でだが、ここでは先述の技能を発揮するために必要な戦い方に関する知識としよう。
『技能』と『戦術(個人)』は非常に密接で絡み合う相互依存な関係にあると考えられる。

ややこしくなることを覚悟の上で、敢えて『戦術(個人)』についても図式化・定義したのは『技能』という言葉では「コートの向こう側にいる相手に対応していかに戦うのか?」といった視点が薄れてしまうことを恐れたからである。バレーボールのゲームがネットという絶対的な障害物によって、相手チームと分け隔てられるネット型スポーツであるが故、相手チームの状況を見て、それを鑑みてどう戦うのか(どうプレーするのか)という視点が欠けてしまう傾向にあると私は考えている。

少し前置きが長くなったが『技能』と『戦術(個人)』は次のように整理できると考えている。

・tempo(セットに対応したテンポの使い分け) ・course-hitting(狙ったコースへのボールヒット) ・position-hitting(狙ったポジションへのボールヒット) ・intentional-blockout(意図したブロックアウト) ・fake-hitting(ディフェンダーを騙してのボールヒット) ・see&response(ディフェンダーを観ての状況判断) ・…

また上記では、敢えて「…(続く)」としている。なぜならプレーヤーに求められる技能と戦術(個人)はバレーボールの進化とともに変遷していくものであるという考えがあるからだ。例えば、アタック戦術とブロック戦術は常に対をなす。どちらかの戦術に進化が見られれば、それに対応しようと新しい戦術が生まれてくる。こうしてバレーボールは時代の流れとともにさらなる高みへと進化し魅力を増してきたのだ。今、必要とされる『技能』『戦術(個人)』が10年後のそれとは違うという可能性は十分にある。というか高い。だからこそ、「…」という表現を書き加えている。

最後にチーム戦術(team tactics)である。まず『戦術(チーム)』の定義だが、リベロを除いて攻撃に参加するすべてのアタッカー(セッターも含まれる)の得点能力を最大化するために必要な戦い方に関する知識とする。大きくは次のように整理することができるのではないだろうか。

・time-gap-attacks (時間差攻撃)
・synchro-attacks(同時位置差攻撃)
・…

『戦術(チーム)』についても「…(続く)」としている。これは先述した内容と同様の理由からである。現代バレーのトップレベルでは同時位置差攻撃が、チームとしてのアタック戦術のトレンドになっていると言えるが、これを無効化するブロック戦術が生まれてくれば、また新しいアタック戦術が生み出されても決しておかしくないはずである。

繰り返しにはなるがバレーボールはプレーヤーによってプレーされることにより、日々進化・発展しているのである。

バレーボールのゲーム構造分析からの気づき

バレーボールのゲーム構造を階層化をしてみることで、バレーボールというゲームを以前よりも俯瞰的に見ることができるようになったように思う。その結果、当初の狙い通りこれまで学んできたバレーボールに関する知識や情報が以前よりも頭の中で体系化されてきた実感がある。とても感覚的な表現にはなってしまうが、頭の中にバレーボールの3Dの地図ができて、その地図上にある3次元の世界の中で、バレーボール・ゲームの「どこ」の部分の「なに」について考えようとしているのかが分かるようになってきたという感じである。

今回、本記事で図式化して解説している階層構造が完璧なものかどうかというと正直そこについては確信は持てていない。というよりも不具合がある可能性はかなり高いだろう。

だからこそ、読者の方からのフィードバックを心からお待ちしている。どんな形でも結構である。コメント、ツイッター、フェイスブック。あらゆるコミュニケーション手段が巷には溢れている。ぜひとも気兼ねなくご意見をいただけると幸いである。そこから、また深い学びが生まれるに違いないのだから。

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