逆足踏切のアタッカーに対するコーチング

逆足踏切のアタッカーは矯正すべきか?

バレーボールコーチであれば、このテーマについて考えたことは一度はあると思います。本記事では、このテーマについてとことん突き詰めて書いていきたいと思います。

逆足踏切とは?

逆足踏切についてまずは確認していきたいと思います。

※本記事では右利きアタッカーを前提として考えていきたいと思います(左利きアタッカーはすべて逆だと理解してください)。

まずは、アタックを打つ際の簡易なプロセスを確認しましょう。

【助走→踏切→ジャンプ→ボールヒット】

上記の順番でアタック動作は行われます。通常(順足)であれば踏切は、

【右足→左足】

となりますが、これが逆足になると

【左足→右足】

となります。

逆足踏切にすることによるメリットとデメリット。

では、逆足踏切であることでどんなメリットがあり、またデメリットがあるのでしょうか?その点について詳しく見ていきたいと思います。

逆足踏切によるメリット

アタックコースやタイミングが取りにくい

これは、右利きプレーヤーが左利きアタッカーに対してブロックやディグを行う際、コース取りやタイミングが取りにくいということに似ています。逆足踏切のアタッカーの打つボールのコースやタイミングは順足踏切のアタッカーとは違ったものとなる可能性が高くなるでしょう。

上記以外にもメリットがないのか色々と考えてはみましたが、明確なメリットとして挙げられるものは現時点では他に考えられませんでした。この点については、今後も考えていきたいと思います。

逆足踏切にすることによるデメリット

ここからは、逆足踏切によるデメリットを挙げていきたいと思います。

体幹の回旋・側屈運動を使うことが困難である

逆足で踏切ることによって引き起こされるデメリットの根幹としてまず挙げられるのが体幹の回旋・側屈を使いにくくなるということです。体幹の回旋・側屈運動がスムーズに行われないことによって、多方面にわたるデメリットが誘発されることとなります。

アタックの威力が下がる

本来、体幹の回旋・側屈運動によって生み出されるはずのパワーが小さくなるため、アタックの威力は下がると考えられます。

肩や腰などの怪我を誘発する可能性がある

上記に記載したデメリット(アタックの威力が下がってしまう)を補完しようとして肩や腰に強い負荷をかけてアタックを打とうとします。こうした余計な負荷をかけて繰り返しアタックを打つことによって慢性的な怪我(例:腰椎分離症など)を誘発する恐れがあります。

アタックコース幅が狭まる

体幹の回旋運動がスムーズに行われないことによって、アタックコース幅が狭まり、限定的になります。コース幅を広げようと無理な打ち方を繰り返していると、上記に記載したように慢性的な怪我を誘発することにも繋がると考えられます。

空中でバランスを取ることが難しくなる

順足踏切であれば、左足で最終踏切を行いジャンプします。そして、そのまま空中で左手をセットされたボールに向かって突き出し、体幹の回旋運動を利用して一気にボールヒットします。この一連の動作で、左足は最終踏切時にネット前方に向かっていき、それに吊られるようにして左手がネット前方に突き出されます。このように、左足と左手を連動させ、一つの軸とすることによって空中バランスを整えているのです。

しかし、逆足踏切の場合、上記記載のように左足と左手を連動させて、体軸を作り出すことができません。そのため、空中で体軸を安定させて力強くアタックすることは難しくなります。

逆足踏切のトッププレーヤーはいるのか?

メリットとデメリットを列挙してみると、順足踏切のほうが合理性が高そうといった印象を受けますが、実際のところトップカテゴリーにおけるプレーヤーで逆足踏切のプレーヤーは存在する(していた)のでしょうか。

過去を振り返ってみると決して大勢ではありませんが、実在していたようです。

ここでは、特に世界レベルのトッププレーヤーとして活躍していたイエレナ・パブロワを取り上げてみたいと思います。彼女はソ連の出身。身長186cm。ナショナルチーム経験も豊富。日本の久光製薬スプリングスでもプレー経験があります。

彼女の情報を様々探している中で、妙に気になる文章がありましたので引用して紹介したいと思います。彼女のアタックについての描写です。

逆足の入りから最後は両足で踏み切る独自のスパイクフォームから放たれるスパイクは、打った瞬間のボールの音で迫力が伝わってくるほどである。ブロックを力で打ち抜いてしまう事もたびたびある。

出典:Wikipedia

この描写からは、逆足踏切であっても相当力強いアタックを打っていたことがひしひしと伝わってきます。

しかし、私がこの文章を読んだときにとても引っかかる点がありました。それは「最後は両足で振み切る」という部分です。

先述した逆足踏切のデメリットの根幹は体幹の回旋・側屈運動がスムーズに行われなくなるという点です。

しかし、助走から最終踏切までのステップが逆足であったとしても最終踏切時点において、両足が(ほぼ)同時に踏み切られていたとするならば、これはもはや逆足踏切と呼べず、「両足同時踏切」と呼ぶべきなのかもしれません。

もし、完全に「両足同時踏切」でジャンプすることができるのであれば、助走から最終踏切までのステップが逆足であっても逆足踏切の「体幹の回旋・側屈運動ができないという」最大のデメリットを打ち消すことができ、順足踏切とほぼ同様に体幹の回旋・側屈運動を活用することができると考えられます。

大変残念ながら、イエレナ・パブロワのアタック動画を確認することはできませんでした。

仮説の域を超えませんが、彼女は体感的に逆足踏切の最大のデメリット(体幹の回旋・側屈を活用しにくい)を感じて「逆足踏切」から「両足同時踏切」へと進化を遂げていったのかもしれません。

また、彼女の身長や体格が私たち日本人と異なっているという点にも目を向けるべきです。私が知る限り、逆足踏切で世界トップレベルで戦っている(戦っていた)日本人プレーヤーはいません。過去に存在していたとしても、そのプレーヤーの数は極めて少数であったのではないでしょうか。

逆足踏切のプレーヤーの矯正を考える際に考慮すべき事項。

さて、最初のテーマに戻ってみます。

逆足踏切のアタッカーは矯正すべきか?

この問いに答えようとする際、プレーヤーの置かれてる状況やプレーヤーの特性を無視して考えることはできません。ここでは矯正するかどうかを判断する際に考慮すべき事項をまとめていきたいと思います。

プレーヤーの所属するカテゴリー

コーチングするプレーヤーが小学生の初級者なのか?それとも、高校生カテゴリーの中級者なのか?はたまた、プレミア・リーグの助っ人外国人なのか?

上記に挙げたものはどれも極端な例かもしれませんが、プレーヤーの年齢やバレー経験年数などを考慮する必要はあるように思います。

プレーヤーの怪我遍歴

プレーヤーのこれまでの怪我遍歴や現時点での体のコンディション(痛みはないか?など)を考慮する必要があると思います。

特に、逆足踏切でアタックを打っている期間が長いプレーヤーであれば、それまでの怪我遍歴には十分に注意を払う必要があるでしょう。また、現時点で怪我の予兆となるような痛みを抱えていないかということもしっかりとチェックする必要があると思います。

プレーヤーの体格やパワー

逆足踏切でも強いアタックを打ち込めるような体格やパワーを持っているプレーヤーであるかをしっかりと見極める必要があると思います。海外のトッププレーヤーの中には逆足踏切のアタッカーがいたりしますが、強靭な体格やパワーゆえに逆足踏切のアタックでもトップレベルで戦えているということがあるかもしれません。慎重にプレーヤーの体格やパワーを把握・理解する必要があります。

プレーヤーに矯正しようとする意思があるのか

プレーヤーの逆足踏切を矯正しようと考える際に、コーチが最も重要視すべき点。それはプレーヤーが逆足踏切を矯正する意思をもっているかどうかです。

もちろん、まずコーチはできる限り逆足踏切でアタックを打つことのメリットとデメリットをプレーヤーに伝える必要があると思います。そして、その上で矯正するかどうかをプレーヤーに問う必要があると思います。

プレーヤーに矯正する意思がない状況で強制的にコーチ側が矯正しようとしても良い結果は決して生まれてこないでしょう。

逆足踏切のアタッカーは矯正すべきか?

再度、最初のテーマに戻ります。

逆足踏切のアタッカーは矯正すべきか?

その答えは、YESでもありNOでもあります。

上記に記載した通り、プレーヤーの置かれている状況や特性を理解し、最終的にはプレーヤーの意思を尊重した上で、矯正するかどうかの判断をすることがコーチの役割だと思います。

こうした極めて難しい判断をする際、コーチに求められることはプレーヤーの長期的な幸せを考え、最適解を導き出すために日々多くを学び、プレーヤーを理解しようと努力し、プレーヤーの意思を最大限尊重することだと思っています。

プレーヤー・センタード。

最終的にはこの言葉に尽きるのかもしれません。

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