サーブレシーブ(レセプション)の技術を徹底的に解剖してみた

これまで私がバレーボールをプレーし、コーチングをしてきた中で最も難しいと感じている技術の1つが、サーブレシーブ(レセプション)です。※本記事では、以後 “サーブレシーブ” で統一します。

おそらく多くのバレーボーラーからも同意してもらえる感覚なのではないかと思っています。

そして、それ故かサーブレシーブは “センス” という一言で片付けらてしまうといった印象があります。しかし、その”センス” という曖昧な一言で片付けられ、一番最初に「サーブレシーブのセンスが悪い」と判定されてしまったプレーヤーの将来の可能性が閉じられてしまってよいのだろうか?という疑問をこれまで持ち続けてきました。

もちろんサーブレシーブが高度な技術であることは間違いなのですが、きちんとサーブレシーブという技術を構成する要素を分解・分析していくことができれば、より具体的・効果的なコーチングもできると思うのです。

そうすれば「センスが悪い」と判定され、サーブレシーブは自分には身につけることができない技術であると諦めてしまったプレーヤーの可能性を再度広げる一助になるのではないか?と思ったのが本記事執筆のきっかけです。

本記事を読んでいただいた後に「サーブレシーブは誰にでも習得が可能な技術である」という認識を持っていただくことができたなら、それが私の本望です。

ここからは、サーブレシーブという技術を構成する要素を時系列に従い、1つずつ丁寧に解説していきたいと思います。

笛が鳴る前からサーブレシーブという行為はスタートしている

バレーボールの試合は、イン・プレーに入る際に必ず笛が鳴り、その一番始めのプレーとしてサーブが存在します。そしてそのサーブという攻撃に対してサーブレシーブと守備が存在しています。

バレーボールの試合を見ていると、すべてイン・プレー中の駆け引きによって試合の勝敗が決定しているように見ますが、実際はアウト・オブ・プレー中の駆け引きが試合の勝敗に大きな影響を与えています。アウト・オブ・プレーの重要性については、下記記事に詳しく書いていますのでご興味のある方はご覧ください。

参考記事:アウト・オブ・プレーの重要性について考える

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話は戻りますが、サーブレシーブという行為自体も、実はアウト・オブ・プレー時間から既にスタートしていると言えます。笛が鳴る前にどれだけチームとしての準備ができているのか?がサーブレシーブの成功率を高めると言っても過言ではありません。

チームメイトとのコミュニケーション

サーブレシーブを失敗する大きな原因の1つとして「チーム内におけるお見合い」が挙げられるのではないでしょうか。チーム内でのコミュニケーション障害がミスを誘発しているケースは試合中に多く見られます。

しかし、これはアウト・オブ・プレー中の「事前」のコミュニケーションによって多くを解決することができると言えます。具体的な方法としては、サーブレシーブに参加するプレーヤー同士で手と手を合わせるなどのスキンシップをはかることで、互いの物理的・精神的距離感・守備範囲の確認をすることができます。

また、事前に取得した相手サーバーの情報(どのコースに打ってくることが多いのか?どんな球種のサーブか?など)をチーム間でシェアすることによって、守備の体制を整えることができます。

笛が鳴ってからボールヒットまでの最大8秒間をいかに活用するか

イン・プレーへの導入合図がまさに笛であると言えます。この瞬間から相手サーバーとの駆け引きが本格的にスタートします。

サーバーには笛が鳴ってから8秒以内にヒットしなければならないという時間的制約があります。ヒットまでの最大8秒間をいかにして活用するのか?この数秒間をうまく使えるか否かが、サーブレシーブの成功率に大きな影響を与えます。

ルーティンによって成功のイメージをつくる

笛が鳴ってからボールヒットまでの間の数秒間で、自分オリジナルのルーティンを実行することは、サーブレシーブ成功率を向上させる上で重要です。

日本ラグビー日本代表の五郎丸選手のボールキック前のポーズ(ルーティン)がフューチャーされたことでスポーツシーンにおける「ルーティン」という言葉がかなり一般的になったように思います。

バレーボール界でいうと、元全日本女子代表の木村紗織のサーブレシーブのルーティンが印象的かもしれません。こうした自分のオリジナルルーティンをつくることによって、自身のリズムや成功イメージを描くことで集中モードに入り、成功率を上げることが可能となります。1つのイメージトレーニングとも言えるかもしれませんが、これも立派な技術です。

参考記事:女子バレーボール界を牽引した「サオリン」木村沙織さん、攻守万能のプレースタイル支えたサーブレシーブの“開眼”

サーバーの情報をできるだけ多く取得する

笛が鳴ってからのルーティンづくりも重要ですが、相手サーバーの情報をできるだけ多く取得することもサーブレシーブの成功率を高める上でないがしろにはできません。

サーバーの表情から読む

サーバーの心理的な状況を表情から読むことができます。攻めのサーブか?入れてくるだけのサーブか?を推測することもできます。またそれまでのサーバーの調子や試合の点数(拮抗した場面か?など)も絡めて推測することができれば、その精度は高まるでしょう。

サーバーの身体の動きから読む

サーバーの目線はどこに向いているのか(キョロキョロしてどこに打つか考えているのか?自チームコートの一点を見て、狙いを定めているか?など)。サーバーの立ち位置はどこか(エンドライン付近か?など)。サーバーの身体はどこを向いているのか(特に足先がどちらに向いているのか?など)。テイクバックの大きさはどの程度か(大きくテイクバックすれば強いサーブになる)。

こうした身体の動きから飛来するボールがどのようなものになるのか?を予測することができます。しっかりと相手サーバーを観察する習慣が身につき、経験を積み重ねていけば、自然とサーブの予測精度も高まるでしょう。

ここまで書いてきたように、相手サーバーの表情や動きを観察することによって、サーブレシーブのポジショニングを微修正したり、フォーメーションを変更したりするといったことが可能となり、優位な状況でサーブレシーブをすることができます。

笛が鳴ってサーバーがボールをヒットするまでの数秒間に「情報戦」が既に始まっているということをしっかりと認識することが重要となります。しかし、初心者やサーブレシーブが苦手なプレーヤーほど、情報戦の重要性を理解できておらず、ボールがヒットされてからが、サーブレシーブであると認識していることが多いように思います。

ボールヒットの瞬間にボールの落下地点を予測し、いかに素早く動くか

ボールヒットされた瞬間から、いかに「無駄なく」「正確に」「素早く」ボールが落下する地点へ移動できるかがサーブレシーブの成功率を高める鍵となることは間違いありません。

「サーブレシーブ」という言葉を聞くと、どうしてもボールをタッチする部分に意識が向きがちですが、サーブレシーブの成功率を高めるために、最も重要かつ難しいのが、ボールの落下地点を予測しいち早く移動するということです。

では実際、サーブレシーブにおいてサーバーのボールヒットの瞬間からレシーバーのボールタッチの瞬間まで、どの程度の時間があるのでしょうか。

下記で一部抜粋し紹介している記事では、女子トップレベルのスパイクサーブで0.8秒程度とあります。この数値から考えるとフローターサーブ(または、ジャンプフローター)といった変化球サーブであれば、おそらく1秒〜2秒の間に落ち着くのではないかと思います。

敵陣で打たれたボールをセッターに返すのが「レシーブ」です。研究結果によれば、選手は秒速約4mで移動でき、ボールに反応するまでの「ムダ時間」が0.3秒あるといいます。すると、レシーバーの守備限界範囲として、以下の「レシーブ限界方程式(?)」が導かれます。

守備限界=4m/秒×(ボール滞空時間-0.3)+1

1(m)は選手のリーチ長で、0.3(秒)は選手が状況に応じて動き出すまでの反応時間です。また、ボールの滞空時間は速いスパイクで0.4秒程度、ジャンプサーブで0.8秒程度ということです。すると、レシーバーが守備できる範囲はスパイクで半径1.4m( 図3下)、ジャンプサーブ半径3.0mということがわかります。

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では、この「1秒前後」という一瞬を効果的に使うにはどうすればよいのでしょうか。

ボールに反応するまでの「ムダ時間(反応速度)」を短縮する

上記、参考記事にも書かれているように、ボールヒットから動き出すまでにかかる時間があります。上記の記事では便宜上、0.3秒と紹介されていますが、実はここにかなりの個人差が存在しているように思います。

そこで、最大限このムダ時間を減らす(反応速度を上げる)トレーニングをする必要があると考えます。移動時間(移動のスピード)を短くするためのトレーニング(ダッシュ系)はしているけれど、このムダ時間を減らす(反応速度を上げる)トレーニングは案外なされていないのではないかと感じます。

スプリットステップを活用して動き出しをスムーズにする

ムダ時間の短縮とセットで考えるべきなのが、動き出しのスピードを早くするという視点です。そのためには動きやすい構え・ステップをつくるのが有効です。

個々の身体能力・筋力バランスなどによって動きやすい構えやステップに個人差は当然ありますが、ここでは動き出しのスピードを上げるステップとして、スプリットステップを紹介します。このステップはテニス競技では基本的技術としてコーチングされていますが、バレーボール競技においてはあまり意識的には教えられていないように感じます(自然とプレーヤーが獲得しているケースがほとんどといった印象です)。

スプリットステップとは:

特に球技スポーツにおいて、攻撃者がボールヒットする一瞬前に軽く跳び、ヒットの瞬間に両足を開いて着地させるステップのことを指します。このステップをうまく活用することで、動き出しを素早く行うことができるとされています。※スプリット( split ) は「分割する」という意味

現在の全日本男子でリベロをしている古賀太一郎選手はこのステップをとてもうまく活用しているプレーヤーだと思います。彼の動き出しスピードは天下一品です。

何を、どのようにして視るのか

さて、次に高速で飛来してくるボール、その他の情報をどのようにして視ていくかについて考えていきたいと思います。

サーバー・ボール・セッターを視る。さらにチームメイトを視る(感じる)

サーブレシーブの成功とは、十分な浮遊時間のあるボールをセッターの真上に正確に返球することだと言えるでしょう。そのため、サーブレシーブを成功させる上ではただただボールを見ているだけでは、成功の確率を十分に高めることはできません。

ここまで書いてきたようにまずは攻撃者であるサーバー・ボール、そして、返球先となるセッターを的確に視る必要があります。そして、さらにチームスポーツであるバレーボールにおいては、誰がサーブレシーブをするのかという判断も必要となります。そのためチームメイト、特に守備にメインで参加するレシーバーの動きを視る(感じる)ことも重要となります。

サーバー。ボール。セッター。チームメイト(複数人)。

これだけ多くの情報を1秒前後の間に全て視る。こうして羅列してみると不可能なことのようにも感じますが、これはスポーツ・ビジョンのうちの一要素である“周辺視野” を適切に鍛えれば、「すべてを同時に」視ることができるようになります。

この“周辺視野” の能力を身につけることなしにはサーブレシーブの成功率を高めることは難しいと言えるでしょう。

参考記事:スポーツビジョン(sports-vision)が競技力を高めるために必須である理由

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ボールを常時、上目遣いで視る

まずは、下記の図を参照してください。

上記の図は、サーブレシーブ時の目線イメージを簡易的に表したものです。

サーブは常にプレーヤーの目線より上部から飛来してきます。その際、自コートに飛来してくるボールをできるだけ長い時間、ボールタッチ(レシーブ)するギリギリまで、意識的に上目遣いでボールを視るようにすることが重要です。

こうすることで、目線が上下にブレることを防げます。目線が上下にブレてしまうと正確にボールの軌道を読むことができずボールを弾く可能性を高めてしまいます。

さらに、上目遣いでボールを視る際のポイントとしては目線の最終ラインをボールの底(上記図で、赤丸印をつけているポイント)に合わせること挙げられます。こうした意識を持つことは、上目遣いで視る意識を強めることに繋がります。

何を意識し、どのようにボールタッチするのか

時系列に従い、ここまでサーブレシーブのポイントについて書いてきましたが、いよいよボールタッチにおける重要ポイントについてまとめていきたいと思います。

オーバー・ハンドまたは、アンダー・ハンド・レシーブを選択する

飛来するボールと自身との距離感・状況(前衛か後衛か?など)に応じて、オーバー・ハンド・レシーブを活用するのか、それともアンダー・ハンド・レシーブを活用するのかを「瞬時」に判断する必要があります。

例えば、自身のポジションがウイングスパイカーで前衛にいる際は、レシーブ後の動きを考えてオーバー・ハンド・レシーブをできるだけ選択するといったことも必要になってきます。

また、ジャンプ・サーブに代表されるビッグ・サーブには、アンダー・ハンド・レシーブで対応したほうがよいという状況もあるでしょう。その時々で最適な選択をする必要があります。

参考記事:オーバー・ハンド・レシーブは身につけるべきスキルである

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ボールタッチ面積が最も広くなる身体部位を活用する

アンダー・ハンド・レシーブであってもオーバー・ハンド・レシーブであっても、重要になるのは、ボールタッチ面積が広くなるよう身体をうまく活用するということです。

アンダー・ハンド・レシーブであれば前腕を使いことになりますが、この場合はできるだけボール接触部位が広くなるように組み手の親指を下に向けたり、組み手を緩めたりするなどの工夫をすることができます。

またオーバー・ハンド・レシーブであれば指の付け根部分を中心にボールタッチする意識を持つことでボール接触部分の表面積を大きくすることができます。

常に理想とする身体部位でボールタッチすることは難しいですが、普段からこうした意識を持ってボールタッチ(レシーブ)の練習をすることは重要です。

いかなる状況下でも面だけはセッターに必ず向ける

すべてのサーブレシーブにおいて、必ずしも正面に入ることはできません。どうしても体の中心から離れた場所でボールタッチをしなければならない局面が出てきます。こうした際にも、常に意識すべきことが「いかなるケースであっても面(ボールタッチ部位)をセッターに正対させるということです。

これは例え身体をセッターに向けることができないような状況であってもです。面さえセッターに向いていれば、うまくボールコントロールできる場面というのは多くあります。

ボールが落下する地点にボールより「一瞬先」に待つイメージを持つ

これは、なんとなくサーブレシーブを見ているだけでは気がつきませんが、よく観察してみると、サーブレシーブ成功率の高いレシーバーは「一瞬」ボールよりも先にボール落下地点に入って「間」をつくってボールタッチしています(常にこうした状況でレシーブできるとは限りませんが)。

先述したサーバーを観察する技術やスプリットステップなどをうまく活用し、ボールタッチの際に「間」をつくる意識をもっておくことは大切です。

自分の得意なボールタッチポジションがどこかを知っておく

ディグに関しても言えることかと思いますが、自分はどこでボールをタッチするのが得意(安定する)なのかを知っておく必要があるかと思います。

例えば、よくコーチングの場面で「ボールは正面でレシーブするように。」と言われることがあるかと思います。しかし、これは少し曖昧な表現と言えると思います。

それはなぜかと言うと、体のちょうど真ん中が安定してボールをレシーブできるというプレーヤーもいれば、中心から少し右にずれたポイントが最も安定してレシーブできるというプレーヤーも存在するからです。

自分が得意なボールタッチのポイントというのを意識しておき、「できる限り」そのポイントでボールタッチができるようポジショニングをするなど、工夫をすることでサーブレシーブ成功率を高めることができると思います。

サーブレシーブとは総合的な技術である

ここまで、サーブレシーブの成功率を高めるために必要な要素を1つ1つできる限り整理し、時系列で書いてきました。

ここまで読んでいただいた方には、1本のサーブレシーブを成功させるために多くの技術を習得する必要があると分かっていただけたかと思います。

こうして改めて整理してみると、サーブレシーブは単純な技術ではなく、極めて総合的な技術であることが分かります。

冒頭でも触れましたが、特に育成カテゴリーにおいては「センス」という言葉で、「その時点において」サーブレシーブの苦手なプレーヤーにサーブレシーブの練習をさせないといった極めて愚かな判断がなされているような印象があります。

こうした愚行をコーチ、大人が「しない」ということがオールラウンドなプレーヤーを育成していくためには極めて重要です。

プレーヤーの「サーブレシーブが上がらない」という最終的な結果だけ見て、「センスがない」と判断するのではなく、サーブレシーブという総合的な技術を構成する○○という技術要素が欠けているから、そこをトレーニンングしていこうと考えることができるようになれば良いかと思います。

バレーボールに関わるプレーヤー・コーチが「サーブレシーブはセンスだ」という言葉を使う代わりに、「サーブレシーブは誰でも習得可能な総合的技術だ」という言葉を使うようになれば、それが私の本望です。

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