スパイクスイング3分類#4

アタック

本記事ではそれぞれのスパイクスイング動作について比較表を見ながら引き続き、考察を深めていきたいと思う。

障害

特定の動作を何度も繰り返して行うといつかは障害が起こるというのはある種避けられないことではあるが、身体に負荷のかかりにくい合理的な動作を身につけることによって障害を起こりにくくするということは実現可能だ

特にスパイクスイングの動作はバレーボールをプレーする上で多く使われるので、いかに合理的なスイングを身につけるのかというのはプレーヤーの選手生命にも大きな影響を与えると言わざるを得ない

合理的な動作について考える際に最も着目すべき観点は先にも触れているが体幹動作である。回旋運動は慣性モーメント(物体が回転運動で動こうとするとき必要な力の量)が少ないため、省エネルギーで大きなパワーを生むことが可能である。つまり合理的な動きだと言える。これに対して前・後屈運動は慣性モーメント(物体が回転運動で動こうとするとき必要な力の量)が多いため、パワーを生むためには大きなエネルギーを必要とする。つまり、非合理的な動きであり、何度も繰り返して繰り返しているうちに身体に大きな負荷をかけてしまう。障害を引き起こすのだ。
※側屈運動は主たる体幹動作であるが、スパイクスイング動作については相対的に見て補助的・付随的な動作であると考えている。

こうして考えてみると障害が起こりにくいスイングが何かということは自明となってくる。以下の通りである。

サーキュラー(障害:起こりにくい)

サーキュラーは障害が明らかに起こりにくいと言える。回旋と側屈を主たる体幹動作としており、前後屈の動作は起こりにくい。

ボウ・アンド・アロー(肩・肘・腰)

ボウ・アンド・アローは回旋を主たる体幹動作としている点でサーキュラーと同様ではあるが、先述した通り、テイクバック動作時にボールを捉える位置がゼロポジションより後方になるケースや、十分な回旋運動ができていない状況で強くヒットしようとしたケースなどでは前後屈の動作を強く付加することになる傾向があるため、腰や肩などに障害が出るといったことが起こり得るだろう。

ストレート(肩・肘・腰

ストレートについてだが結論から言うと最も障害が起こりやすいスイングだと言わざるを得ない前後屈を主たる体幹動作とし、テイクバックも小さくなってしまうため、どうしても腰や肩、肘とあらゆる部位に負荷をかけてしまう結果となる。さらに大きなパワーを生み出すことも非常に難しいスイングである。

着地傾向

着地傾向についても考察を深めていこう。なぜ着地傾向という観点を加えたかというと着地の良し悪しが選手生命を脅かすような重大な怪我を引き起こしたり、慢性的な障害を生む可能性があるからである。ジャンプ後の着地では体重や跳躍力などによって大きく変動するが、自身の体重の約3倍から5倍の負荷がかかると言われている

サーキュラー(着地傾向:両足※利き足優位)

サーキュラーは両足着地、利き足優位傾向にある。ヒット前の回旋・側屈運動によって非利き手が前方かつ高いヒット・ポジションに向かう。そして、そこからボールヒットに向けて、逆の体幹動作(左回旋・左側屈運動)によって利き手が身体の前方かつ高いヒットポジションへ向かう。そして、ボールヒット後も体幹の捻り動作は継続し、利き手と同様に利き足も身体の前方へと向かっていき、両足がほぼ同時のタイミング、場合によっては若干の利き足優位で着地する

ボウ・アンド・アロー(着地傾向:両足(片足)※非利き足優位)

ボウ・アンド・アローは両足着地、非利き足優位傾向にある。ヒット前の回旋・後屈運動によって非利き手がヒット・ポジションに向かう。しかし、サーキュラーと違い側屈運動よりも後屈運動が起こりやすいため、非利き手によって規定されるヒットポジションが少し後方(被り気味)になる傾向にある。そして、そこから逆の体幹動作(左回旋・前屈)が起こるが、ボールヒットするポジションはサーキュラーと比較すれば相対的に被り気味になってしまう傾向にある。これによって逆の体幹の捻り動作は阻害され、回旋運動が途中で止まってしまう。そうすると、利き手と同様に利き足が身体前方へ向かっていくことなく着地に至ることとなり、両足がほぼ同時のタイミング、場合によっては非利き足優位(片足気味)で着地する

ストレート(着地傾向:両足)

ストレート・アームは両足での着地である。これまでの説明からも分かるように回旋や側屈運動がほとんど伴わないために体幹が捻れるといったことは起こりにくい。そのために両足での着地が基本となる

著名なプレーヤー

サーキュラー(著名なプレーヤー:西田)

スイングの軌跡が他のプレーヤーと比較しても非常に特徴的なのが西田選手である。彼は世界標準で見ると、男子プレーヤーの中では非常に小柄なプレーヤー。彼の場合、特に十分なアプローチを確保して、ブロードジャンプができているバックローアタック時にはサーキュラーだということがよく分かるのではないだろうか。

ボウ・アンド・アロー(著名なプレーヤー:キム・ヨンギョン)

長らく世界のトップレベルで活躍したプレーヤー。世界標準で見ても、女子プレーヤーの中で長身のプレーヤーだと言えるだろう。彼女のアプローチの長さは他のプレーヤーと比較してみても相対的に短く、ジャンプは直上気味、ヒットポイントはどちらかというと後方気味だと言えるかもしれない。

ストレート(著名なプレーヤー:該当なし)

このスイングの著名なプレーヤーを見つけることはおそらく難しい。もし、そのようなプレーヤーがいればぜひとも教えていただきたい。

Saika Yuta
written by

1987年生まれ。小学1年でバレーを始める。小·中学校時には計4回全国大会に出場。中学3年時は香川県代表の主将としてJOC出場。高校では、進学校にて春高出場を目指す。大学進学を機にバレーから離れるが高校教員となりバレー指導に没頭するように。そんな日々の中、バレー選手になるという夢を諦めきれていない自分に気がつき、教員を辞めバレー選手となるためドイツ·ベルリンへ。生活基盤が整い始めた矢先、息子が大怪我をして急遽帰国。息子の回復後は北海道へ移住しクラブを設立し、コーチングを生業とするように。その後、縁あって仙台市を拠点に活動するリガーレ仙台(当時:V2リーグ)のヘッドコーチに就任。ワンシーズン指揮を執る。2024年7月より、シンガポールの育成クラブにてコーチング活動に従事。

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